1.残っている周囲の組織を健全に保つ
歯列やかみ合わせの力のバランスが崩れると、次々と歯が失われていくことがしばしばみられます。失った歯を補うことは、失った機能と形態を回復しながら、この力の調和を取り戻し、現在残っている歯、残っている顎堤を保全することが基本となります。
(1)歯を補うことによって残っている歯をどれだけの犠牲にするのか?
ブリッジを選択した場合、支えとなる歯が健全歯ならば、削らなければならず、2次的な虫歯や歯髄炎、歯周炎などを起こす危険性が高まります。また、入れ歯であっても、入れ歯を支える歯には負担がかかり、虫歯や歯周病を引き起こす危険があります。
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| ブリッジの周囲が歯周病になっている。また、ブリッジの下で虫歯になっており、グラグラしてきている。 |
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ブリッジをはずすと、歯の汚染が広がっている。 |
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入れ歯を支える歯に負担がかかる。
汚れもつきやすい。 |
(2) 残存歯、顎堤、粘膜にどれだけの負担をかけるのか?
組織は適度な負荷に対しては補強の方向に、過度あるいは無荷重では吸収する性質をもっています。歯を補う場合にその負担が適正でなければ、残存歯の根が折れたり、ぐらぐらと動揺したり、顎骨が吸収するといった危険があります。
また、歯は上の歯と下の歯、隣同士の歯が接触することによって、その位置を保っています。
1本の歯が無くなってしまうと、それに接触していた歯は、次の相手を求めて延びてきたり、傾いてきたりして咬み合せが崩れてきます。そして、次々と歯が失われていくことがあります。
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| 上の歯が延びてきている |
歯が傾いている |
上の歯が下の歯肉と咬んでいる。 |
(1)(2)に関して、インプラントは残存歯には何ら犠牲や負担増をかけずに、欠損部の顎堤に新たなる支持と維持を求めるものなので、その点で優れています。
また、成功したインプラントならば、顎堤(顎の骨)は吸収されずに保たれ、隣在歯(隣の歯)や対合歯(かみ合わさる歯)の保全にも十分な役割を果たします。
(3)歯を補うことによって、力や微生物のコントロールが可能か?
かみ合わせの力の負担には、顎骨による支持、歯根膜(歯と歯槽骨の間にある線維)、による支持、粘膜による支持があります。この3つは圧力がかかった時の変位量が違うため、これらをいかにコントロールするかが、問題となります。
変位量の異なるものが同じ歯列弓に混在する場合、変位量の少ないもの(つまり、インプラントに)に力が集中しやすくなります。
このような場合、力学的に管理のしやすい設計をたてることが重要です。
インプラントは、ブリッジや入れ歯に比べて、より天然歯に近い形態を付与することができるため、微生物学的コントロールがしやすいといえますが、十分なメインテナンスと自己管理が行われなければ、骨の吸収等、インプラントの除去を余儀なくされる可能性もあることも頭に入れておかなければなりません。
2. 咀嚼、発音、感覚機能などの機能の回復
歯を失うことによって、咀嚼、発音、感覚機能は低下します。歯を補うことによってその機能を回復するわけですが、補綴装置(ブリッジ、入れ歯、インプラント)の維持や安定を考慮したうえで、どれだけの機能が回復できるかが問題となります。
- 咀嚼機能(食べ物を噛む機能)
咀嚼機能の指標として咬合力(咬む力)を比較すると、インプラントは天然歯とほぼ同程度ですが、入れ歯では、はるかに低く(1/4〜1/3)なります。
- 発音・感覚機能
入れ歯では、非生理的な環境になり、歯より動揺するため、まず、環境に慣れ、使いこなさなければなりません。
上顎では、嚥下(飲み込む動作)や発音に重要な部分を入れ歯の安定や維持のために、覆わなければならないことがあり、下顎でも、安定のために粘膜面を入れ歯で覆うことにより、舌の運動を制限します。このように、入れ歯を安定させ、咀嚼機能を回復するためには、それ以外の機能を犠牲にしているわけです。
インプラントでは、基本的には失った部分のみを回復し、かつ十分な維持があるため、このような犠牲は強いられません。
3. 審美性の回復
インプラントでは、他の部位の歯や組織に支持を求めないため、より天然歯に近い審美性を回復することができます。
最近では、より審美性を考慮にいれた形態のものが開発され、高い審美性を得ることができます。
一方、審美性を優先して、力学的なバランスを失うことが問題となりますが、近年、積極的に骨を誘導したり、骨移植や結合組織移植などの外科的方法で、組織の改善が行われるようになり、力学的バランスを保ちながら、審美的なインプラントの埋入が可能になってきました。
4. 心理面での回復
失った歯を補うことにより、前述した機能や審美性が回復され、より快適な生活が送ることができるので、心理面でもプラスになります。
しかし、若い人にとって、入れ歯はかなりの心理的な抵抗や異物感があり受け入れられず、作っても使用しない場合が多くみられます。
この点、インプラントは異物感が少なく、機能的にも審美的にも優れているため、心理面で有利といえます。
一方、視点を変えると、痛み等がでた場合、インプラントは自分ではどうすることもできませんが、入れ歯の場合では患者さん自身がとりはずすことによって痛みから解放されるという利点もあります。つまり、入れ歯の最終的な受け入れは患者さん自身が決めることができるということがいえます。(受け入れられなければ、歯は補えないのですが・・・)
<歯科矯正における意義>
矯正用に作られインプラントで、歯を動かす固定源として使用します。従来の矯正では難しかった歯の移動を可能にし、治療期間の短縮が期待できます。また、抜歯や外科手術を必要としていた症例が、抜歯なしにインプラントを固定源として歯を動かすことができます。 (全ての患者さんに適用できるわけではありません。)
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